その1.テレビ会議システムの接続形態
*このコンテンツには連載当時(2004年)のままの情報が含まれます。ご注意ください。
曽我蔵くんは、先日、あるお客様から質問を受けた。
「テレビ会議システムにMCU(多地点接続装置)を追加すれば、1対1だけではなく複数拠点と同時接続できることは分かったけど、具体的にどういう構成になるのかな?」
たまたまその資料を持っていなかった曽我蔵くん。その場は口頭でお客様に説明し納得していただいたが、帰社したら自分で資料を作ろうと決心した。
帰社した曽我蔵くんは、さっそく資料作りに取りかかった。ひと通り作成してから、市川さんにチェックをお願いしてみようと考える。
テレビ会議システムの接続形態は3種類だったな
接続の種類として、
- 1対1通信
- 端末で構成する多地点接続
- MCUで構成する多地点接続
の3つを書き出し、それぞれの特徴をまとめてみることにした。
1対1通信
特徴
- 相手側端末をダイレクトにコールしてセッションを張る。
端末で構成する多地点接続
特徴
- 多地点機能を持った端末を親機とし、子機とセッションを張っていく。
- 接続可能な地点数に限界がある。
ただし多地点接続を行う場合には、親機がある拠点はテレビ会議に参加しなくも端末を立ち上げておく必要がある
MCUで構成する多地点接続
特徴
- 各端末と多地点接続装置(MCU)とでセッションを張っていく。
- 接続できる最大拠点数は、MCUの能力に依存。
- 大規模ネットワーク向け。
以前、市川さんに、MCUはサーバーと同じようにずっと立ち上げおくのが主流だと教えてもらった気がする。確か、高機能のMCUなら何百台も多地点接続ができるとも言ってたっけ
曽我蔵くんはブツブツとつぶやきながら資料をまとめ、市川さんの空き時間を狙ってチェックをお願いした。
ポイントtoポイント型通信方式
市川さんは曽我蔵くんから資料を受け取り、さっと目を通して「思ったよりいい出来!」と誉めてくれた。
(誉め……たんだよな)と多少の引っかかりはあるものの、曽我蔵くんもまんざらではない。しかし、「ところで……」と市川さんに視線を向けられると、思わず身構えてしまう。
耳慣れない言葉に、曽我蔵くんは首を傾げる。
テレビ会議だけでなく、一般電話や携帯電話、IP電話も“ポイント to ポイント型”だね
サーバー&クライアント型通信方式
で、その話の流れからいくと、“ポイント to ポイント型”以外の接続形態もあるということですね
もう1つは、“サーバー&クライアント型”通信方式だ。
通信を行うのに、必ずサーバーを経由する方法だ。端末だけの通信は不可で、クライアントPCからサーバーに、データをアップロード・ダウンロードする形でテレビ会議を行うんだ。
“サーバー&クライアント型”通信を行う代表的なものは、Webカンファレンスだよ
Webカンファレンスの定義は2つある。
1. サーバーアンドクライアント型であること
2. 専用ソフトをインストールせず、Webブラウザで開催された会議室にログインする
システムによって、プラグインの読み込みが必要になる場合もあるね。
また、システムによって、強化ポイントに違いがあるのも特徴だ。映像重視のシステムもあれば、データ重視のシステムもある。
ネットワークはIPネットワークが必須だ。
それから、それぞれのシステムが独自方式のため、違うメーカーとの通信はできないというのが、“ポイントtoポイント型”通信を使用するシステムと大きく違うところだね」
曽我蔵くんはノートを広げて、テレビ会議システムの通信方式を改めてまとめてみた。
通信方式のまとめ
ポイントtoポイント型 | 1対1 |
---|---|
端末で構成する多地点接続 | |
MCUで構成する多地点接続 | |
サーバー&クライアント型 | Webカンファレンス |
そこでふと、疑問にぶちあたる。
特定のところとやりとりするから平気……ってわけじゃないだろうしなあ
と言って、市川さんはテレビ会議システムに関するセキュリティを説明を始めた。
教育担当の市川です。
前回の「第3部 テレビ会議システムに必要なネットワーク その2.IPネットワークの種類と条件」の中で、満たすべき条件の1つに「帯域」をあげたことを覚えていますか?
テレビ会議システムで多地点接続を使用する場合、各端末とMCUが通信を行い、MCU内部処理によってミキシングされた映像・音声が各端末へ返されます。このため、ネットワークのトラフィックはMCUに集中します。
つまり、MCUが設置された拠点には、テレビ会議端末台数分のネットワーク帯域が必要になるのです。
たとえば、384kbpsで3拠点通信をする場合には、MCUがある拠点の帯域として
384kbps×1.4(IPのオーバーヘッド)×3拠点=1612.8kbps
が、上り・下りで必要になります。
端末で構成する多地点接続の場合も、MCUで構成する場合も同じです。覚えておいてくださいね。