第2回 GiRAFFE&Co.×VTV ジャパン対談
新型コロナウイルスの感染拡大予防対策によって、オンライン会議が予想を超える規模で急速に広がりました。その一方で、多くの企業がオンライン会議にどのようなツールを使えばいいのか、セキュリティをどのように考えればいいのかといったことに悩まれているのではないでしょうか。
Webマーケティングソリューションを提供する株式会社GiRAFFE &Co.様は、VTVジャパン株式会社の提携先として、長年の間、支援やご協力をいただいています。前回の対談ではWeb会議を利用するユーザーとしてのご意見と「働き方」に対する思いを代表取締役の吉澤宏充氏に伺いました。今回は、アフターコロナ、ウィズコロナのオンライン会議の活用法と今後考えられる変化について、吉澤氏と弊社代表の栢野がオンライン会議で対談しました。
プロフィール
株式会社GiRAFFE&Co.(ジラフ アンド コー)
代表取締役 吉澤 宏充
https://giraffe-co.jp/
Webマーケティングの課題を独自の視点で解決するWebマーケティングソリューションカンパニー
最大の変化は社外とのオンライン会議の増加
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言によって、テレビ会議やWeb会議が使われる場面が増えたと思います。どんな会議でも「ひとまずWeb会議でやってみよう」と試みた企業も多かったのではないでしょうか。栢野さんは、この変化をどのように見ていますか。
テレビ会議やWeb会議ツールを使った会議は、企業によっては以前から社内で行われていました。新型コロナの影響によってその量が増えたことは間違いありません。また、これまでオンライン会議では扱わなかった内容も扱うようになるなど、質も変わってきたと思います。
最も大きな変化は、社外とのオンライン会議が増えたことです。吉澤さんは以前から社外とオンライン会議をしていたと思いますが、一般的ではなかったのではないでしょうか。
そうですね。相手の企業にリモートで会議をする文化やリテラシーがないとできませんでした。
電車に乗れば30分くらいで行ける会社とオンライン会議をする意識は、これまではありませんでした。それが今では「リモートで会議をしませんか」と言いやすくなりましたね。商談ベースでお客様にオンライン会議をお願いできるようになったのは、大きな意識の変化だと思います。
オンライン会議はたしかに広がりましたが、社外と行う場合、どういう場面に向いているのかは手探りの状態です。御社ではどう考えていますか。
社員とはオンライン飲み会のようなコミュニケーションもあると思いますが、社外となるとコミュニケーションの質が違ってきます。
コミュニケーションの質とは、具体的にはどのようなことを指すのでしょうか。
抽象的に言えば、カジュアルなのかフォーマルなのかということです。具体的には、扱っている情報の質ですね。オンライン飲み会で「最近どう?」といった会話は、第三者にとってはどうでもいい情報ですよね(笑)。しかし、上場企業の今月の業績や経常利益といった情報は、第三者に聞かれるとリークされるリスクがあります。
そうすると、セキュリティが大事になってくると思います。セキュリティをどうすればいいのかは、多くの企業が悩まれているところだと思いますが。
セキュリティには段階があります。それは今触れたように会議の内容によって変わってきます。内容に応じてセキュリティの要求事項がありますので、この要求事項によってオンライン会議サービスに必要な機能も違ってくるでしょう。しかるべき対応をすれば、リスクは軽減できますので、コミュニケーションの回数を増やして、ビジネスの質の向上を図ることは可能です。
海外に販路を広げるチャンスに
オンライン会議が広がったことで、海外とのやりとりが簡単にできるようになり、商圏が海外に広がるチャンスではないかと期待しています。弊社では4月にビジネス英会話ができる人材を登用して、海外にリーチできるサービスの開発を始めました。
ただ、海外の企業がどのようなツールを使っているのかについてはよくわかっていません。海外企業の商談には、どのようなツールが必要でしょうか。
海外で高いシェアを占めているのは、ZoomやWebexなど、アメリカ発のサービスが多いですね。私がいま利用しているようなテレビ会議専用機を接続しようとすると、Zoomでは難しいかもしれません。BlueJeansなどが相性がいいと思います。
海外ではテレビ会議専用機を使っている割合が高いのでしょうか。
会社の事業形態にもよると思いますが、それなりの企業では会議室に専用機を置いています。ただ、アメリカなどではリモートワークが日本よりも進んでいるので、オフィスに設備を持たずに、個人がPCで業務を行なっている会社もありますね。
PC用のツールと専用機ではもともと技術が違います。それらを接続して、一緒に使えるようにする技術が進んでいるところです。BlueJeansなどのメーカーは、PCと専用機をつなぐことを前提に開発しています。一方で、ZoomなどはPCで使うことを前提に発展した技術なので、専用機とつなぐことについては許容度が少ないですね。
サービスを提供しているメーカーが、それぞれどんなバックグラウンドをもっているかによって、PCと専用機を融合させた時の安定度が変わってくると思います。
テレビ会議専用機を使うメリットは
テレビ会議専用機を使った方がいいのは、複数対複数のコミュニケーションを行う場合でしょうか。
そうですね。テレビ会議専用機は複数同士が会議室でつながる場合に適していて、グループで使うための機能が最適化されています。カメラもマイクも性能のいいものを使います。私はいま一人で専用機を使って話していますが、贅沢な感じですね。
専用機は費用が高いと言われますが、どのような部分に費用がかかるのでしょうか。ネットワークか、機材か、それとも運用コストでしょうか。
ネットワークと機材ですね。まずネットワークは、企業の大事な情報をやりとりするわけですから、先ほどお話したセキュリティを考える必要があります。社外から接続するネットワークは当然ながらフリーWi-Fiでは危ないですよね。
御社ではどのようなセキュリティ対策をしていますか。
弊社のリモートワークの対策としては、会社から支給したスマートフォンのテザリングしか使わないようにしています。家庭のネットワークは使いません。何がぶら下がっているのかわからず、家庭のPCにウイルスが入ってしまったら影響を受けますから。オンライン会議ではデータ量を消費しますので、できるだけ接続帯域を抑えられるように、音声だけで参加するなどの工夫もしています。
5Gのサービスの提供も始まりましたが、浸透するまでには何年かはかかるでしょうね。専用機は機材も高いということですが、価格はどれくらいですか。
安いものは20万円くらいからで、高いものでは100万円を超えるものもあります。車に例えると、軽自動車があって、中堅クラスの乗用車があって、高級車があるイメージです。用途によってツールは変わってきます。
専用機が個人に広がるとすれば、小型のものが開発された場合ですね。リモートワークをしている時、PCの画面に相手の映像と資料映像の両方を表示させるのは大変です。資料はPC、相手の映像は専用機で見るといった使い分けが広がる可能性はありますね。
オンライン会議がオフィスや住環境を変える
弊社の会議室はフローリングで、前面ガラス張りです。先日、御社の方からガラス張りはあまりテレビ会議に向かないと聞いて、ブラインドを設置しました。
ガラス張りがテレビ会議に向かないのは、光の調整が難しく、音が反響するからです。
そういったことは皆さんあまりご存じないのではないでしょうか。これからはオフィスづくりも、オンライン会議を前提に考える必要が出てきますよね。同時に、リモートワークが進むことで、働く場所も変わってくる気がします。
そうですね。都心から離れた、休日にゆっくりできるようなところに住んで、週に2日だけ出勤するといったライフスタイルを送る人が増えそうですね。週2日なら新幹線通勤でいいと考える人もいるのではないでしょうか。
新幹線で通うのであれば、熱海もいいですね(笑)。ワーケーションや、サブスクリプションで住居を変えるといった働き方が進む可能性もありますね。
新型コロナウイルスで緊急事態宣言が出ているなかでは、電車が空いていたこともあって、自分のQOL(Quality Of Life)をどう上げていくかに目が向くようになったと思います。
私がお付き合いしている個人事業主の方とも先日そんな話をしました。そのお店は23区内の立地のいい場所にありますが、固定客を持って営業しているので、「何もこんなところに店を持たなくてもいいのでは」と思い始めたそうです。
銀座に店を持つことが業界のステータスなのですが、そういうことよりも顧客が喜んでくれて、自分も落ち着いた暮らしができる場所がいいとおっしゃっていました。
そうなると不動産の価値も変わってきますね。
不動産も変わるでしょうね。同時に、住環境も見直されていくと思います。日本の住宅は狭くて、子どもの勉強部屋はあっても、仕事部屋や書斎は基本的にはありません。それがリモートワークが市民権を得ると、自宅で仕事をすることが前提になって、そのための設備が織り込まれてくると思いますね。
ということは、これからはWeb会議などのビジュアルコミュニケーション環境が充実して、リモートワークの制度が整っている企業に、いい人材が集まってくるということでしょうか。
多様な働き方ができることが、いい人材を採用できる条件になってくるかもしれませんね。それだけではないと思いますが、そういう側面はあると思います。
リモートワークの使い分けで生産性を確保する
生産性をどう向上させるのかも、リモートワークの課題だと思います。生産性の向上についてはどのようにお考えですか。
生産性は難しいキーワードですね。そもそも何をもって生産性を測るのかが難しい。売り上げや損益は運不運や外的要因で上下することも多いですから、ホワイトカラーの業務は数字に換算しにくいですね。
ただ、リモートワークはオフィスに集まって取り組むビジネスより、アウトプットの質は下がると思います。その一方で、別の何かが生み出される可能性があります。新たな企業文化かもしれないし、目立たなかった社員が新たな能力を発揮するかもしれません。
これは私の楽観的な見方ですが、どこかの時点で効率一辺倒の評価から脱却できるのではないでしょうか。効率ばかりを追うと、自分たちは何がやりたいのかを見失いがちになります。どんなことに全力で取り組むかが重要になってくると思います。
私はコミュニケーションの質が担保されれば、時間の効率は上がっていくと思います。どういう場合にWeb会議が適していて、どういう場合には適さないのか、使い分けることが大事ではないでしょうか。
弊社が取り組んで感じたのは、教育に関してはちょっとしたコミュニケーションが取りづらいので、Web会議では難しいですね。オンラインの会議はいい面も悪い面もあるので、その使い分けを知っている企業が成果を出して、強い企業になると思います。
それと、人も同じですね。オンラインのコミュニケーションに向いている人と向いていない人がいます。性格を把握した上で、どういうタイプの人がWeb会議に向いていて、どういう人が直接対話した方がいいのかを把握して対応することができれば、生産性は上がっていくと感じています。
そうなると、今後は要求されるマネジメントスキルも変わってきますね。新型コロナによって、部下をどう管理して、監督するのかという上司のコミュニケーション能力が、ドラスティックに変わっていくのではないでしょうか。またそのお話を伺えればと思います。本日はありがとうございました。
こちらは2020年6月の対談をもとに作成された記事です。記事内容はすべて取材当時のものとなります。