テレビ会議クラウドサービスの立ち位置
企業が利用するクラウドサービスと言っても、様々なクラウドサービスがあります。例えば人事系で利用する「勤怠」や「採用管理」のサービスや、財務・会計系で利用する「給与計算・明細」や「請求書発行」のサービスなど、目的や用途に応じたクラウドサービス(SaaSやASPとも呼ばれます)は世の中に多々存在します。
その中でも「テレビ会議クラウドサービス」は【コラボレーション】という枠に属されます。コラボレーションクラウドサービスは「グループウェア」や「ビジネスチャット・社内SNS」、「ワークフロー」や「プロジェクト管理」などのサービスが該当されますが、テレビ会議クラウドサービスは「Web会議」を含む【コミュニケーション】のカテゴリーに当てはめられます。
もう少し細分化して考えるとWeb会議は基本的にパソコンを使ってVMR(バーチャル・ミーティング・ルーム:クラウドサービス上にある仮想会議室)に参加し「少人数で行うミーティング」や「チームで話し合う打合せ」など、人と人がつながり、手軽さと資料共有(お互いVMR上に表示された資料に書き込みあえる)を重視し、時間をかけずにサっと始めてサっと終わるような【カジュアル】なコミュニケーションに向いています。
一方、テレビ会議クラウドサービスは基本的にテレビ会議専用機を使ってVMRに参加し「経営会議」や「営業会議」などの【フォーマル】な会議を行う上で、テレビ会議専用機で参加できない人はパソコンや電話などから会議に参加する手段が取れる利用方法をイメージし、場所と場所がつながり、映像や音声をしっかり相手に伝え、マインドを重視するコミュニケーションに向いています。
またWeb会議のようにパソコンから参加するカジュアルな会議、電話だけを使った音声会議も開催することが可能なので、主にフォーマルな会議で利用するが、カジュアルな会議にも対応できるハイブリッドなクラウドサービスとも言えるでしょう。
※カジュアルな会議(人と人をつなぐ)を想定したWeb会議があり、その上にフォーマルな会議(場所と場所をつなぐ)を想定したテレビ会議クラウドサービスが位置付けられます。
テレビ会議クラウドサービスではパソコンだけの会議や音声(電話)だけの会議も開催することが可能なので、会議用途や参加場所、使用するデバイスによってカジュアルな会議、フォーマルな会議、どちらでも対応できるハイブリッドサービスになっています。
テレビ会議クラウドサービスとは
テレビ会議多地点接続アプライアンスサーバー(MCU)、OSやアプリケーションソフトウェアを自社内にもたず、アウトソースしている先から提供される仕組みを利用して、テレビ会議多地点接続運用が行えるサービスの総称を「テレビ会議クラウドサービス」と呼びます。
端末自体はローカルにあるが、サーバー群とその機能がネットワークの向こうにあり、今まで自社で所有管理していたサーバー群をクラウドサービス利用することで、高額な費用を投資することなく高品質かつ高機能なビジュアルコミュニケーションが可能となり、管理・運用面においても管理者の負担を軽減する効果が得られます。
会議用途や回線、端末の違うそれぞれのコミュニケーションを、テレビ会議クラウドサービスで統一化することができ、働き方改革やMCUリプレイス費用削減、どんなデバイスでも同じ会議に参加できる等の利点を考え、テレビ会議クラウドサービスに加入する企業が急増しています。
自社内でMCUをオンプレミス構築しているシーンから、テレビ会議クラウドサービスに運用を変えた場合、このような効果が見込めます。
【従来のテレビ会議運用:オンプレミス】
- 利用:社内利用メイン
- 会議形態:フォーマル
- 会議場所:社内
- ネットワーク:社内VPN利用メイン
- デバイス:テレビ会議専用機メイン
自社内に複数のサーバーを設備し、基本的には社内利用を目的としている。ルールやセキュリティは自社で設定することが可能。 接続数を増やすためには、高額なMCUを追加購入し増設する必要があり、年間保守費用もサーバーの数だけ必要となる。パソコンやスマートデバイスは専用のアプリケーションをインストールして利用する。他社が提供するUC*との連携は、別途高額なアプライアンスサーバーと複雑な設定を行う事で可能となる。
*UC(Skype for Businessなど)
【テレビ会議クラウドサービス】
- 利用:社内・社外
- 会議形態:フォーマル+カジュアル
- 会議場所::社内・社外・自宅など自由
- ネットワーク:インターネットが使える環境
- デバイス:身近にあるデバイス
全ての機能をクラウド上に集約し、オプション費用無しで各デバイスや他社が提供するUCの接続が可能になる。 但し、ルールやセキュリティはクラウドサービスに依存されるので、クラウドサービス選定時には、トライアルで検証を行う必要がある。インターネット環境から身近にあるデバイスで会議参加できるので、経営会議などのフォーマルな会議から、ちょっとした打合せや取引先とのカジュアルなチームミーティングまで様々なコミュニケーションに対応できる。
この様な事からまとめると、
- 自社で高額なサーバー(ビジュアルコミュニケーション環境)を構築する必要が無い。
- インターネット接続できるネットワークが整っていれば、社内外関係なく会議やミーティングに参加できる。
- ルールやセキュリティはテレビ会議クラウドサービスに依存されるので、管理者の管理負担が軽減される。
- サービスの規定によるが、今利用しているテレビ会議専用機は買い替えることなく、テレビ会議クラウドサービスを利用できる。
- テレビ会議、Web会議、音声会議と別々に使い分けていたコミュニケーションを、テレビ会議クラウドサービスなら「オプション不要」で一本化できる。
などの理由も含め、テレビ会議クラウドサービスへ乗り換えられる企業が急増しています。さらに、
- 管理運用側で深い専門知識が無くてもユーザー(社員)にサービスを提供できる。
- お客様や取引先様、仕入先に負担をかけることなく、社外とのビジュアルコミュニケーションが可能になる。(ゲスト参加機能)
- ひとり1ID持たせることで、VMR (バーチャル・ミーティング・ルーム)の予約が不要になり、接続ポートの枯渇を心配しなくて良い。
- 1VMR(バーチャル・ミーティング・ルーム)の最大接続数が飛躍的に増える。
- 今までハードルの高かった会議録画が簡単に出来る。
などの理由からもテレビ会議クラウドサービスを検討される企業が増加傾向にあります。
働き方改革の一環として、テレビ会議クラウドサービスが注目されている現状もありますが、もっと多くのベネフィットがこのサービスの中に含まれています。
では、テレビ会議クラウドサービスで「何ができるのか」「メリット(利点)はどこにあるか」「デメリット(注意点)は?」「どんな企業にテレビ会議クラウドサービスがお勧めなのか」を 解説したいと思います。
テレビ会議クラウドサービスで「何ができるのか?」
テレビ会議クラウドサービスとは、でご紹介した通り、テレビ会議クラウドサービスでは様々な用途に応じたテレビ会議多地点接続を行う事ができます。ただ、現在ご利用されている多地点接続方法の「MCU」やテレビ会議専用端末で利用する「内蔵多地点接続」と多地点接続の考え方が少し異なります。
MCUの場合、最大接続数は「〇ポート(〇台)」接続、という考え方になります。なので、VMR(バーチャル・ミーティング・ルーム)自体は複数作ることができますが、上記図の場合、VMRが複数作られていてもMCU全体で12台接続してしまうと、もうそれ以上のデバイスが接続できなくなり、他の多地点会議を行う事ができません。
テレビ会議専用端末で利用する 内蔵多地点接続も同じ考えで、4拠点接続オプションが搭載されたテレビ会議端末に3拠点(自分を含めると4拠点)接続すると他の拠点は参加することができません。また内蔵多地点接続機能を持っていないテレビ会議端末は「1:1」のみの接続しかできないので、他のテレビ会議専用端末にも内蔵多地点機能が無ければ複数拠点が接続できません。
ではテレビ会議クラウドサービスを利用すると、どのように多地点接続方法が変わるのかを見ていきましょう。
テレビ会議クラウドサービスの場合、ポート単位の契約ではなく「ID」単位の契約になります。1ID=1VMR(1バーチャル・ミーティング・ルーム)ですので、10IDをご契約されると「10VMR」=10会議室利用できる事になります。
テレビ会議クラウドサービスのサービス内容によりますがBlueJeansの場合、1VMRに「100接続」できますので、BlueJeansを10IDご契約いただくと上記図のように同時に「10会議」を開催する事ができ、1会議室当たり「100接続」なので、トータル接続数はなんと「1000接続」まで可能になります。1VMR=100接続の内訳はテレビ会議専用端末が50台、パソコン参加が10台、タブレット参加が10台、音声(電話)参加が30台といった風に、デバイスに関係なく沢山の拠点や人が会議に参加できます。
テレビ会議利用するユーザーにIDを持たせることで「今日はAさんのVMRで会議しよう」だとか「営業会議は必ずBさんのVMRで開催しよう」などの利用方法が可能です。またテレビ会議専用端末の内蔵多地点機能では、パソコンや音声(電話)を接続する際、別途オプションやハードウェアが必要となりますので、こちらの費用や運用を軽減することも可能となります。
※2020年4月現在、BlueJeansは1VMRに「150接続」に接続が可能です。
テレビ会議クラウドサービスの「メリット」
テレビ会議クラウドサービスには沢山のメリットがありますが、ここでは分かりやすく「3つ」のメリットを上げさせていただきます。
- 管理者がいなくても楽々運用
- テレビ会議がなくても参加可能
- 状況によってサービスの変更が可能
管理者がいなくても楽々運用
サーバーのメンテナンスはサービス提供業者が行うので、管理者はいなくでも大丈夫です。常に新しいバージョンで利用可能です。
テレビ会議がなくても参加可能
テレビ会議がなくても、パソコンにカメラ・マイクを用意できれば参加できます。インターネットを利用するのでネットワークの確認も必要ありません。
※サービスによってはライセンスが必要な場合があります。
状況によってサービスの変更が可能
拠点や社員の増減など、状況に応じてライセンスを買い足したり、減らしたり、サービスプランを変更することも可能です。他のサービスへの乗換えも容易です。
その他のメリットとして、社内外(社員・仕入先・取引先etc)で利用者に手間や負担をかけることなく利用することができたり、サービスによっては1VMRあたり25~1000接続できる、テレビ会議クラウドサービスで行う会議を無制限に録画できたりするメリットもあります。
テレビ会議クラウドサービスの「デメリット」
便利に利用できるテレビ会議クラウドサービスも、注意しておかないとデメリットになるポイントがいくつかあります。こちらも「3つ」の項目に分けてご紹介します。
- セキュリティはサービス提供会社任せ
- サービス利用なので月額固定費が必要
- バージョンアップ毎に環境が変わるリスク有り
セキュリティはサービス提供会社任せ
インターネット回線を利用するため、VPNのような強固なネットワーク構築はできません。セキュリティはサービス提供会社の対策次第です。ここがネックになるとクラウドサービスの利用は不向きです。
サービス利用なので月額固定費が必要
買取(オンプレミス)ではなくサービス利用なので、利用し続ける限りは、毎月固定費用を支払う必要があります。買取を想定されて予算を組むと、数年でオーバーしてしまう場合もあります。
バージョンアップ毎に環境が変わるリスク有り
サービス提供会社がサーバを管理していますので、突然のバージョンアップなどで、自社に不向きな変更が行われる可能性もあります。
その他の注意点としては、テレビ会議クラウドサービスはインターネットを利用しますので、企業でインターネットの出入口をデーターセンターなどで1本化されている場合、通信帯域の強化を行うなどネットワークの再設計が必要であったり、テレビ会議クラウドサービスは常に双方向の通信を行うためネットワークに「プロキシ(Proxy)」設定されていると、本来のパフォーマンスが発揮できない場合がございます。
企業でインターネットの設計にプロキシを設定されている際も通信帯域強化同様、ネットワークの見直しや再設定を行う場合がございます。
「プロキシ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』を参照
最後に
テレビ会議クラウドサービスとはどのようなサービスか、ご理解いただけましたでしょうか?どんな企業でも、どんな利用方法でも、テレビ会議クラウドサービスの活躍シーンは無限大です。
- テレビ会議運用をシンプルにしたい
- テレビ会議インフラ機器をシンプルに構築したい
- MCUの接続ポートが足りない
- 多地点会議室(VMR)が足りない
- テレビ会議システムとWeb会議サービスを1本化したい
- 既存のテレビ会議システム専用端末を活かしながら、多地点接続数を拡張したい
このような企業様にお勧めしたいテレビ会議クラウドサービス。
次の章では、より具体的にVTVジャパンが取り扱うテレビ会議クラウドサービスを「3回」に渡ってご紹介して参ります。