テレビ会議システム刷新で
「駆け込み寺」企業に問い合わせが増えた裏事情:
「今まで通り」が通用しないのはなぜか
「機器置き換え」ではテレビ会議システムの更改に対応できなくなりつつある。ベンダーの製品体系が変わり、利用ニーズも変化したことで、導入にまつわるトラブルもある。
テレビ会議システム刷新トラブルの駆け込み寺はどう対処しているか。
※2020年1月アイティメディアに掲載されました。
テレビ会議システムのリプレースで直面する2つの課題とは
テレビ会議システムのリプレースでは、これまで想定できなかった新しい課題に数多く直面する。そうした課題に直面したユーザーの「駆け込み寺」となっているのがVTVジャパンだ。
これまでのテレビ会議システムの多くは用途を限定し、一度運用が始まると数年間継続して利用するというケースが多かった。ITシステムというよりファシリティーとしての側面が強く、導入パートナーも運用まで一貫してサポートするというケースは少なかった。そんな中、VTVジャパンは複数のベンダーの製品を取り扱い、導入のコンサルティングから実装、運用改善のアドバイスまで一貫したサポート体制を敷く。
VTVジャパン 代表取締役の栢野正典氏は「働き方改革の流れもあり、テレビ会議の使い方は多様化しています。同時に、スマートフォンやタブレットなど、テレビ会議のためのデバイスも多様化しています。これら2つの多様化が進む中で、どのテレビ会議システムをどう使えば目的を達成できるのかの判断が難しくなっているのが現状です。お客さまからは『そもそも何を選択すべきかが分からない』といった相談や、システムの選定や使い方を間違えてしまい『期待した成果が出ないがどうすればいいか』といった相談を受けるケースが格段に増えました」と話す。
設立から26年を迎えるVTVジャパンは、こうした顧客に寄り添いながら課題を明らかにし、適切なシステムの選定と運用方法をアドバイスしてきた。
栢野氏によると現在、企業が抱えるテレビ会議システムの課題には2つのパターンがあるという。
「一つは、新しい取り組みを進めるためにテレビ会議システムの活用を進める場合。もう一つは、企業合併などで複数のシステムの統合が必要になる場合です。前者は、新しい取り組みに何が必要かを判断することが課題になります。後者は、従来のシステムから使い勝手や機能を変えずにどう運用を続けるかが課題になります」(栢野氏)
ベンダーが提案したクラウドサービス、現場に必須の「意外な機能」が消えることも
1つ目の課題に直面したのがA社だ。A社はオンプレミスの専用線環境にMCU(多地点接続装置)を設置してテレビ会議をしていた。品質も安定し機能も十分だったが、現場の社員が日常的に利用できる環境ではなかったという。そこで採用したのがクラウドサービスとして提供されるテレビ会議システムだ。
VTVジャパンの亀高欣也氏(営業部サポートチーム マネージャー)はこう話す。
「テレビ会議のトレンドの一つにクラウド化が挙げられます。多くの開発ベンダーがテレビ会議のクラウドサービス版を提供し始め、クラウド型テレビ会議サービス専業ベンダーも登場しています。ただ、クラウド型テレビ会議サービスは性能を一般化するために機能が制限されているため、テレビ会議システムと同じベンダーであっても同様の機能が提供されるわけではありません。移行してから機能不足に直面し、投資がムダになるケースもあります」(亀高氏)
システム切り替え時は現場ニーズのヒアリングが欠かせない。ことテレビ会議システムは、総務部門などが主導して同じメーカーの機器の更新で済ませてきた企業が多く、調査不足のまま製品選定が進むことがあるという。
A社のケースも、総務部門が主導して現場でのそれまでの使われ方を調査しないまま「クラウド移行ありき」で進められた。結果として、現場ニーズと乖離(かいり)が生まれ、業務が混乱してしまったのだ。
「現場が最も問題視したのは、意外にも新たに導入したクラウドサービスの画面分割数が以前よりも減ってしまったことです。10人以上の参加を前提に運用してきた現場からすると、この機能変更によって会議体の運営そのものを見直さなければならず、大きな負担を強いることになりました。この結果、クラウドへの移行は失敗だったとして、情報システム部門がその後の対応に追われることになったのです」(亀高氏)
採用したクラウドサービスは既存のテレビ会議システムとは異なるベンダーであり、情報システム部門にもノウハウがなかった。A社から相談を受けたVTVジャパンは、現場の要望をヒアリングして問題の真因を突き止め、現場のニーズを満たす機能を持った別のクラウドサービスに移行することで混乱を収束させたという。
リプレース後の問題「使い慣れた運用を継続する方法が見つからない」を解決
2つ目の課題としてB社の事例を紹介しよう。B社は、複数の企業の統合・合併を経て基幹システムや業務システムの統廃合を進める中、テレビ会議システムについてもそれぞれが使用していた別々のシステムの運用統合が進められていた。
苦労の末にようやくシステムの運用統合が軌道に乗ってきたところで、新たな問題が発生した。メーカーのサポート終了日が近づいていたため、中枢となるMCUをリプレースしなければならなくなったのだ。テレビ会議が業務に深く浸透しているB社にとって、既存システムの保守やサポートを継続して受けられるかどうかは大きな問題だった。B社は継続使用できないかとあらゆる方法を模索したが解決方法が見つからず、新たなMCUを探すことになったのだ。
その際、B社はクラウドサービスを含む、さまざまなテレビ会議の多地点接続方法を検討したが、「今までの運用を変更しない」という方針に合致するシステムを見つけられなかった。この問題を解決すべく、VTVジャパンはB社の要望に最適なMCUの選定と既存運用を引き継ぐ利用者向けの運用システムを開発し、両システムを連携させて運用できるソリューションを提供した。
実際にB社の課題をヒアリングしたVTVジャパンの武石洋一氏(営業部営業チーム マネージャー)は次のように説明する。
「十分にヒアリングし、お客さまが抱える問題、課題を明確にした上でリプレースの計画と設計を実施することが重要です。その設計の基で構築、導入したテレビ会議システムであればユーザーのニーズを満たしながら、セキュリティや可用性、保守性も確保できます。B社さまが挙げた最優先課題――『運用が変わることによるユーザーの混乱を回避し、テレビ会議稼働率を維持したい』をどうしたら実現できるかを弊社に相談いただきました」
「B社さまは、最新システムを導入したところで今までの運用方法を継続できないというギャップをどう埋めるべきか、答えを見つけられずにいたのです」(武石氏)
相談を受けたVTVジャパンは、合併後のB社が保有する複数のベンダーや新旧モデルが混在し利用されている状況を把握し、全てのテレビ会議専用機を接続できるMCUを選定した。
選定に際しても、決定に至るまで検証に検証を重ね、接続互換を確認してニーズを満たす製品を探求したという。加えて、新たなMCUで既存の予約システムと同じように操作できる独自の予約システムも開発し、ユーザーインタフェースを再現するなど、混乱なく導入できる方法を検討した。これらを連携させた仕組みを構築することでB社の新テレビ会議システムを稼働させ、課題を解消したのだ。
「ソリューション回路」で多様化するニーズに適切に応える
VTVジャパンがテレビ会議システムのコンサルティングやシステム実装、運用といったソリューションを提供する上で重視しているのは「ヒアリング」「デザイン」「構築」「運用」という4つのステップだ。
「中でもヒアリングは、現場に納得してシステムを利用してもらうための重要な要素です。管理・利用シーンを設定し、導入プロジェクトの方向性を確定します。各ステップを進める際は常に目的とゴールを共有して、顧客の納得を積み重ねます。ビジネス環境やユーザーニーズが激しく変化する中では、常に目標とゴールを共有し、ギャップを減らしていくことが重要です。運用に入ってからも、定期的な効果測定とヒアリングを通じて問題を改善して、新たな課題を設定し、システムと運用モデルを進化させていきます」(亀高氏)
このソリューション提供にはVTVジャパンが25年間蓄積した知見も活用される。マルチベンダーでテレビ会議システムを提供してきた同社ならではの導入モデルやテンプレート、ドキュメント類を「ソリューション回路」としてまとめており、ヒアリングや導入プロジェクトに役立てている。
「製品ありきで考えるのではなく、お客さまのニーズの本質を見極め、最適なテレビ会議ソリューションを提供できるのが当社の強みです。B社さまのように足りない箇所を開発で補うことも当社ならではの方法だと思います」(武石氏)
特にクラウドは頻繁にサービスが更新されるため、同じ操作性を持ったシステムとして使い続けるためには継続的なメンテナンスが欠かせない。かつてのテレビ会議システムのように機器を導入して終わり、というわけにはいかなくなっているのだ。
栢野氏は「テレビ会議システムに求められる機能は20年前と大きく変わりました。使い方やデバイスは多様化し、ユーザーのニーズも日々変化しています。企業として会議やコミュニケーションの在り方をどうすべきかを改めて考えることが重要です」と話す。そうした顧客ニーズに寄り添い、適切な提案ができることがVTVジャパンの強みとなっている。
※本コンテンツは2020年1月アイティメディアに掲載されました。