MCU入門 第3回
テレビ会議を自社IP網を越えて利用するための拡張について
– 1.ISDNテレビ会議端末と接続
現在、企業のなかのテレビ会議専用端末は、H.323 / SIPに準拠し、回線はIPを利用して接続されていることがほとんどです。
しかし、会社の外からもテレビ会議に参加したいことがあります。そのとき利用可能なテレビ会議システムがISDNに接続されたH.320の場合もあるでしょう。あるいは出先からの接続のため、3G携帯電話によるH.324Mテレビ電話もしくは音声電話を使いたいこともあるでしょう。
このような場合、H.323端末を収容する企業内ネットワークにゲートウェイを設置して、企業内外の相互接続を実現します。ゲートウェイは異種ネットワーク、異種通信プロトコルの間を変換する通訳の役目を果たします。
この様子を下図に示します。3G携帯電話網とIP網をつなぐような場合、まず移動網と固定網の網間接続が必要で、ネットワーク提供者がサービスを提供します。固定網側はISDNで受けることになっていて、そのため自社IP網のゲートウェイはISDNに接続されているのです。
他社のH.323 / SIPテレビ会議端末がIP網につながれている場合はどうでしょうか。同じIP網につながているH.323 / SIP端末の間の接続なのでプロトコル変換は必要ありませんが、自社のファイアウォールを越える必要があります。
ファイアウォールは安全のために設置されているものですから、簡単に越えられるようにはできていません。電話だと簡単に他社とも接続できるのに、コミュニケーションを加速化するためのツールであるテレビ会議が他社と接続できないのは、利用者の立場からすると、ちょっと納得がいかないところです。
実はこれには技術的な制約があったのですが、利用者の要望に応えるかたちで技術が進歩し、現在では企業間テレビ会議ができるようになってきています。
これらの自社IP網と非IP網の間、あるいは自社IP網と他社IP網の間の接続拡張について、まとめてみたいと思います。
ISDNテレビ会議端末と接続する
10年以上前に一番多く使われてきたISDNテレビ会議システムはH.320という標準に準拠していることがほとんどです。回線費はIPに比べて高くつきますが、IP接続回線の品質に不安な地域相手に、また、NAT / ファイアウォール越え問題を避けるため、今でも利用されています。
このときは、H.320とH.323 / SIPというプロトコルを相互に翻訳するゲートウェイをいれて、IP / ISDN間通信を行います。
ISDNテレビ会議端末は、IPアドレスではなく、ISDN番号をつかって相手に接続します。H.320ゲートウェイの回線の出入り口は、片方がIP (Ethernet) で、もう片方がISDNです。
H.320テレビ会議端末からH.323端末に接続する手順は、
- H.320テレビ会議端末から、H.320ゲートウェイのISDNの番号に電話をかける
- 接続できたら、H.320ゲートウェイがH.320をH.323に翻訳して、H.323端末に接続要求信号を送る
- H.323端末が接続要求に応えて、H.320端末とつながる
逆に、H.323端末から、H.320端末に接続する手順は、
- H.323端末が、H.320ゲートウェイを経由してH.320端末のISDN番号に接続
- H.320端末が応答すれば、H.323端末とつながる